どっちの夫婦ショー
第2話
「・・・・・・・申し訳ありません。土方さ・・・いえ、土方は、急な仕事が入り・・・・今回は
私のみで・・・・・・・。」
アメストリス国御一行様が宿泊している大名屋敷の広間では、大総統夫人と准将夫人を
前に、小さな身体を更に縮こませながら、千鶴は深く頭を下げた。
「気にしなくても良いですよ。お仕事ならば、仕方ありませんもの。」
恐縮している千鶴に、優しく声を掛けるのは、大総統夫人。その横では、
エドワードもニッコリと微笑んでいる。
「昨日は本当にすまなかったな。本当なら、ロイを連れてきて、土方さんにきっちりと
謝らせるつもりだったんだけど、本人、全然反省の色がなくってさ。また顔を合わせると
何を仕出かすか分からないから、今日はここに置いていくんだ。でも、ちゃんと制裁をして
おいたから、安心してくれ♪」
可愛らしく微笑むエドの姿とは対照的な殺伐とした内容に、千鶴は真っ青な顔で顔を上げた。
「せ・・・・制裁ですかぁ!?」
驚く千鶴に、エドはコクンと頷いた。
「ああ。勿論!悪い事したら、それ相応のお仕置きしなきゃな!
・・・・・・・・今頃、死んでなきゃいいけど。」
小声でボソッと呟かれる内容に、千鶴の顔が青から白く変わる。
屋敷の奥から時折響く、銃声の音と男の悲鳴に、更に千鶴の恐怖心が膨れ上がる。
”し・・・死ぬって!?一体何をなさったんですか!?”
ガタガタと震える千鶴を気にせず、大総統夫人とエドの会話は続く。
「まぁ、エドワードちゃんもなの?私もしっかりと叱っておいたわ!大総統なのに、
いつまでたっても、子供っぽくって、困ったものよね〜。今日はお仕置きとして、
仕事をたんまりしてもらっているの。今日一日、外には出れないはずよ?」
男の人って、本当に手間がかかるわね〜。と微笑み合う大総統夫人とエドの
姿に、千鶴は失神寸前である。
”土方さん・・・・・。私、会話についていけません〜!!”
「それで、千鶴さんは、土方さんに、どういう躾をほどこしたのかしら?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
無邪気な笑みを浮かべながらの大総統夫人の爆弾発言に、千鶴は固まる。
「あっ!それ、俺も聞きたかった!あの後、やっぱ怒ったんだろ?あれは
流石に酷かったもんなぁ。」
大総統の言葉に、エドもウンウンと頷く。
「し・・・躾って・・・・・あの・・・・仰っている意味が・・・・・・・。」
引き攣る千鶴に、エドはムーッと頬を膨らませる。
「それにしても、土方さんのあの発言は一体何なんだ?女を
ただの召使いとしか思っていないのか?何なんだよ。お茶が旨いって。」
「そーよね。物語の場面のように、生で妻について、熱く語ってくれると、
内心期待していたんですけど・・・・・・。残念でしたわね。」
エドの言葉に、心底残念そうに溜息をつく大総統夫人。そんな二人に、千鶴は
困ったように訊ねる。
「あ・・・あの。先ほどから土方さん・・・・・じゃなかった、土方の言葉に
お二人は気分を害しているように、お見受をしますが・・・・・私には、そこが
疑問なのですが・・・・・・。」
千鶴の言葉に、エドとキョトンとなる。
「は!?何言ってんだよ。流石に、うちのロイのように、ベラベラ、恥ずかしい言葉を
延々と語られるのは堪ったもんじゃねーけどさ、夫が妻に対して言葉が、
お茶が旨いってだけって、すごく失礼だろ?」
「えっと・・・・・・。私は失礼とは思いませんでした。何も出来ない私を、皆さんの前で
褒めて下さったんですもの。むしろ、嬉しいくらいで・・・・・。」
その時を思いだしたのか、ポッと千鶴の頬が紅く染まる。その様子に、大総統夫人の目が
キラキラと輝き出す。
「まぁ!まぁ!惚気?惚気なのね!!日本人は奥ゆかしいと聞いているけど、そーゆー
お話を待っていたのよ!!ここには、女しかいないわけだし、今日はどこにも行かないで、
じっくりタップリと夫との恋話に花を咲かせましょうよ!!」
「ええええええええええええええ!!」
大総統夫人の言葉に、千鶴は絶叫する。
”恋話!?無理!!無理です!絶対に無理〜!!助けて下さい!土方さん!!”
第一、自分達は本当の夫婦ではない。一体、何を話せばいいのかと、青くなる千鶴に気づかず、
エドはムーッと頬を膨らませて大総統夫人に抗議する。
「えーっ。俺、別にロイとの惚気話なんてないぞ?」
そんなエドに、大総統夫人はクスクス笑う。
「まぁ、エドワードちゃんは、気が向いたらでいいわよ。今は千鶴さんの話を聞きましょう♪」
そう言って、千鶴にニッコリと微笑みかけた大総統夫人の目は、狙った獲物は逃がさないと
ばかりに鋭かった。
対決その2 【愛する夫の事を語りましょう♪】
(制限時間 無制限)
「それで?土方さんはどういう方なの?やはり物語のように、仕事第一人間なのかしら?」
大総統夫人の言葉に、千鶴はコクンと頷いた。
「あ・・・はい。昼夜を問わず、新選組の為に働き続けています。」
千鶴の言葉に、エドはウーンと腕を組む。
「うちのロイに土方さんの爪の垢でも煎じて飲ませたいぜ。どうして、うちのは仕事を
サボってばかりいるんだ?」
「サボリ・・・・ですか?お仕事を?」
信じられないと驚く千鶴に、エドは苦笑する。
「でも、やる時はやるぜ?前はともかく、今は俺と一緒にいたくって、サボってる
みたいだからな。困った奴なんだけど、そこが可愛いというか・・・・。本当はいけない
事なんだけど、仕事より俺が大事って言ってくれて、すごく嬉しいんだ♪この間もさぁ、
俺がちょっと熱を出したら、仕事を休んで看病してくれたし・・・・。俺の父親って、
家庭を顧みなかったサイテーな奴だったんだけど、その点ロイは、家庭を大事にして
くれて、文句のない夫なんだ!そうそう、この間、こんな事が・・・・・・・。」
昨日のロイに負けず劣らず、エドの惚気話が延々と続いていく。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・やはり、似た者夫婦なんですね・・・・。」
人が聞いていまいがお構いなしに、目を輝かせながら、いかに自分が愛されているかと
延々と語りだすエドの様子に、千鶴は引き攣った顔で呟いた。
第2勝負、エドワードの圧勝。