どっちの夫婦ショー  番外編

〜第2回 反省会 〜近藤と山南の場合〜



「・・・・・・まさか、これほど土方君が役立たず、
もとい、情けない人とは思いませんでしたよ・・・・。」
ここ、新撰組の局長室で、ふうとため息をつきつつ、お茶を飲んでいるのは、新撰組の総長、山南敬助。
その前には、困った顔で近藤が腕を組んでいた。
「あのトシがなぁ・・・・・。もっとうまく立ち回ると思っていたんだが・・・・。ところで、トシは今どこに?
昨日から姿が見えないようだが・・・。」
「土方君なら、昨日から、ずっと源さんに怒られてますよ。そろそろ助けてあげた方がいいでしょうか。」
と、言いつつも、一向に腰を上げない山南に、近藤はため息をつく。
「なぁ、そろそろトシを許して・・・・。」
許せませんよね。勿論。
近藤の言葉を遮るように、山南はキッパリと言い切った。
「今回の件、綱道さんに知れたら、どうなると思っているんですか?」
!!バレたのか!?綱道さんに!!
驚いて大声を出す近藤を、山南はシッと人差し指を口に当てて黙るように示す。
「す・・・すまん。」
慌てて頭を下げる近藤に、山南は肩を竦ませる。
「気を付けて下さいね。今は幸い、沖田君達幹部全員を、アメストリスのお客人達の所へ行く千鶴君の
警護に付けているので、屯所にはいませんが、いつ彼らにバレるか・・・・・。綱道さんの失踪事件の真相は、
幕府のお偉方や綱道さん、松本先生、近藤さん、源さん、私という、ごくごく限られた者しか
知らないことなんですからね。」
「ああ・・・・本当にすまない。以後気をつける。」
神妙な顔で項垂れる近藤に、山南はふうとため息をついた。
「今回の件、何とか綱道さんの耳に入らないように、根回し済みです。こんなことが知れれば、
【やはりうちの娘は新撰組の幹部にやらん!!】と怒鳴り込んで来て、千鶴君を連れて帰ってしまいますからね。」
「うむ。最初は、『綱道殿のご息女を新撰組の幹部の誰かの嫁に』という、上様直々のご命令に、
恐れながら、内心はどうかと思ったのだが、千鶴君の人柄に触れるにつけ、是非トシの嫁になってほしいと、
俺は思うようになってなぁ。」
「・・・・・ですから、破談にならないように、色々と手を打っているのでしょう?私も最初は、
【仲人がしてみたい】などとふざけた、もとい、庶民的な事を言う上様に、眩暈を覚えたのですが、
こんなに良い子を紹介して頂いて、今では本当に感謝しています。ここで破談になってしまったら、
話は薩摩の風間さんの所へと流れてしまうのでしょう?今さら他家になど横取りされてなるものですか!!」
山南の言葉に、近藤がウンウンと頷く。
「うむ。会津公に感謝せねばなるまい。あのお方が籤で当たりを引いてくれて、本当に良かった。」
「とにかく、今日は一日、土方君を徹底的にしごいて、昨日のような失態を
起こさせないようにしなければなりません。源さんが終わったら、次は近藤さん、あなたの番ですよ。
あなたは妻帯者なのですから、ここはビシッと夫婦とはなんであるかを、骨の髄まで叩き込んであげてくださいね!」
「あい分かった。全てはトシと千鶴君の為。この近藤勇、見事役目を果たしてみせよう!」
拳を握って使命に燃える近藤に、山南は満足そうに大きく頷くのであった。






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