どっちの夫婦ショー 番外編

 第6回 反省会 ~ホークアイとハボックの場合~




「上官命令ということで、今回は、俺とホークアイ大尉の反省会です。
テーマはズバリ!【准将夫婦が勝つにはどうすればいいか!】ですが
・・・・・・・・・・・・無理でしょうねぇ。」
「無理ね。読者様のご要望ですから、私達が、とやかく言えないわ。」
ため息とつくハボックに、ホークアイはズバリと切って捨てる。
「で?これだけなの?もうないのならば、私は業務に戻らせて頂くけど。」
無駄な時間ねと肩を竦ませるホークアイに、ハボックは、慌てて手元の紙をめくる。
「あ・・・・他には、【仕事中エディ達と一緒にいられる方法】とか・・・・。」
ピクリとホークアイの眉が跳ね上がる。
「ちょっとそれ見せなさい。」
半目でハボックを睨みつけながら、ホークアイは書類を見せるように手を差し出す。
「いや!これは・・・・・あまり大尉に見せるなと言われまして・・・・・・・。」
シドロモドロに弁解するが、ホークアイは有無を言わさずハボックの手から書類をひったくる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何?これは。」
厚さ10センチはあろうかという書類を、ものすごい勢いで捲っていたホークアイは、
最後の文面を見て、ブルブルと震えだす。
「・・・・・・・・・・・・・・・【と、これだけの議題があれば、いかにホークアイ大尉が優秀でも、
暫くは時間が稼げるだろう。その間、私とエディは外に遊びに行ってくるから、
しっかりと足止めをするように。なお、この任務が遂行できなかった場合、
貴様の軍法会議所行きは決定事項となる。ヒューズの家族自慢を向こう10年間ほど
毎日聞くのだな。では、健闘を祈る。        ロイ・マスタング】・・・・・・ですって?」
ホークアイはニッコリと微笑むと、ハボックに詰め寄った。
「これは一体どういうことなのかしら?」
「それはその・・・・・・。」
慌てて視線を逸らすハボックに、ホークアイは胸倉を掴むと、ニヤリと笑う。
「どうやら、反省をしなければならないのは、准将だけではなかったようね。さっさと
准将を捕縛しに行くわよ!・・・・・それから、捕縛した後、准将同様あなたにもそれ相応の罰が
待っているので、絶対に逃げないように。」
ホークアイはハボックを胸倉を掴んだまま、引きずるようにして部屋を出て行った。











「おいし~!!」
満面の笑みを浮かべるエディは可愛い。と、ロイは思った。
しかし、その隣にチャッカリ座っている人物の存在が、ロイを奈落の底に突き落とす。
「本当に、ここのお菓子は最高ね~。甲子太郎さん、是非うちの国にも支店を出すといいわよ!!
絶対に繁盛すると私が保証しますわ!!」
「まぁ!大総統夫人の太鼓判を頂けて、この伊東、光栄ですわ~!!ああ、藤堂君、斎藤君、
そろそろ焼きあがる次回の新作けえきを、ここに持ってきて頂戴。」
エドの隣に座っている大総統夫人の大絶賛に気を良くしたらしい伊東が、平助と斎藤に新作ケーキを
持ってくるように命じる。そんなやりとりをぼんやりと眺めながら、ロイは何故こんなことになったのかと、
内心頭を抱えていた。ホークアイを出し抜いて、これから誰にも邪魔されずデートできると、
ホクホク顔でエドと二人宿から出てみると、何故かそこに大総統夫妻がいた。
嫌な予感に顔を引きつらせるロイにお構いなしに、大総統夫妻に引きずられるまま
連れてこられたのは、【甘味処 桜花】。
そして、何故か先に来ていた土方夫妻と同席になり、ロイは更に機嫌を悪くさせていた。
それは自分の隣に座っている土方も同じなのであろう。いつもの倍以上眉間の皺が増えている。
「何で、貴様がここにいるんだ。」
小声でロイは土方に尋ねる。
「仕方ねえだろ。伊東さんが昼も食べられないくらいに忙しいと言っていたのを聞いた千鶴が、
皆さんにお弁当をって作っちまったんだから。お礼に菓子を食っていけって、無理やり引き止められたんだ。」
不機嫌そうな土方に、ロイは肩を竦ませる。
「私が聞いているのは、貴様の事だ。何故、貴様がここにいるんだ?仕事大好き人間の土方殿?」
仕事大好き人間という嫌味な言葉に、土方はピクリと反応する。
「千鶴一人に持ってこさせる訳にはいかなかったんだよ。手の空いている人間が俺しか
いなかったというのもある。」
「ほう?随分、奥方を過保護にしているんだな。」
「・・・・・・・・・・色々事情があんだよ。ほっとけよ。」
ニヤリと笑うロイに、土方は触れられたくない話題なのか、スイと視線を逸らす。
「ふむ。では、こうしよう。千鶴殿は私達が責任を持って屯所へお送りするから、
お前はさっさと帰って、大好きな仕事をすれば良いので・・・・・・・・・・わあああああ!!」
ジャキンという音と共に後頭部に銃を押し付けられる感覚に、ロイは恐る恐る後ろを振り向くと、
ニヤリと不気味な笑みを浮かべているホークアイの姿があった。たまらず悲鳴をあげるロイの
首根っこを掴むと、ホークアイは、そのままロイをハボックに渡す。
「大好きな仕事をするのは、あなたの方です。准将。ハボック中尉、そのまま准将を連行。
溜まっている仕事を全て終わらさせて。それで、あなたの罰はチャラよ。」
「イエス!マム!」
ロイの首根っこを掴まえたまま、敬礼するハボックに、ロイは食って掛かる。
「おい!ハボック。上官命令だ。離せ。」
「すんません。准将。大尉には、絶対に逆らえません。悪しからず。」
澄まして答えるハボックに、ロイは埒が明かないと思ったのか、ホークアイに懇願する。
「大尉!残っている仕事は全部大総統のものだろ!!何故私が!」
「・・・・・それは大総統命令です。私にはどうすることも出来ません。」
シレッとそんな事を言うホークアイの隣では、大総統が紅茶を飲みながら、
ウムウムと大きく頷いていた。
「エディ~。」
権力者達のお気に入りの妻に助けを求めるも、頼みの綱のエドはニッコリと笑って
頑張って~と可愛らしく手を振るばかり。
孤立無援状態に、追い打ちをかけるように、ホークアイは、にこやかに笑う。
「ご安心を。准将の代わりに、この私がエドワードちゃんを立派にエスコートしますから。
では、お仕事にお戻りを。」
言うだけ言ってホークアイはさっさと先ほどまでロイが座っていた椅子に座ると、
ロイの事を忘れたかのように、楽しそうにお茶会に参加していた。
「うううううう・・・・・エディ~。」
滂沱の涙を流すロイに、ハボックは咥え煙草をピコピコ動かしながら、呆れたように言った。
「大尉を出し抜ける訳ないじゃないですか。いい加減、学習してください。」
ほら、行きますよと、ロイを引きずるようにハボックは歩き出す。
「・・・・・・・・・もしかして、【准将】っていうのは、一番下っ端なのか?」
呆然とロイ達のやり取りを見ていた土方は、ポツリと呟いた。





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