それは、こんなに月が綺麗な夜だったのだという・・・・・。
雲ひとつなく、満月がはっきりと見えた夜だったそうだ。
水の都と称えられ、大陸で一番の勢力を持っていた
国が、一瞬にして滅んだのは。
あまりにも栄えていた為、月の魔力を持つと噂される、
隣国の姫の逆鱗に触れたという。
姫が手のひらを合わせただけで、
あんなにも水の恩恵を受けていた国が、一瞬のうちに
水が干上がり、砂漠と化してしまった。
そして、砂は容赦なく国王に、国民に襲い掛かる。
悪夢のような一夜があけ、そこには、ただの砂漠が広がる
ばかり。
あの繁栄はどこへ?
何故自分達はこんな目に合わなければならない?
生き残った民達の絶望は強い。
このまま、自分達も砂漠と共に滅びるのか・・・・。
だが、神は滅び行く国を憐れに思い、王の末の息子を
1人生き延びさせた。
生き残った人々は、それに狂喜した。
王の血筋は何よりも尊い。
何故ならば、民を安住の地へと導くからだ。
黒き髪と黒き瞳を持つ、まだ幼い王子を、民達は王と仰ぎ、
魔女姫から守るように、祖国を発った。
いずれ、この幼き王が、魔女姫を倒し、
再び民達を、祖国へと導く事を祈って・・・・・・。