月の裏側 〜 Love Phantom 〜  新婚編

              月華恋歌       

 

                         第4話

  

 

 

 

 

                「鋼姫!よくも私に!!」
                朝の謁見の時間、ラグール王国の第一王女、
                サラ・イサフェナ・ヴァルロ姫が、顔の半分を
                タオルで隠し、侍女達に抱えられるように、
                謁見の間に現れた。
                「【鋼姫】・・・・・・。」
                【鋼姫】の名前に、その場にいた人間は、
                ひそひそと囁きながら、エドワードに一斉に
                視線を向ける。
                黄金の髪と瞳を持つエルリック王家の姫。
                皆、口には出さないが、心の奥底では、
                エドワードに伝説の【鋼姫】を重ね合わせていた。
                「・・・・まずいな。」
                謁見の間にいたハボックが唇を噛み締める。
                昨日、漸くエドが皆に受け入れられたというのに、
                これでは、また振り出しに戻ってしまう。
                王女の言葉に、その場の雰囲気が不穏な物へと
                変化しつつある事に、ハボックとアルフォンスは
                唇を噛み締める。
                今、ここで自分達がエドを庇うと、余計エドを
                窮地に追い込んでしまうと判っている為、
                ここで静かに見守っているしかない。2人は、
                祈るような気持ちでロイを見つめる。
                「・・・・鋼姫・・・とは?」
                ピンと張り詰めた空気の中、静まり返った謁見の間に、
                ロイの抑揚のない声が響き渡る。
                「遥かなる昔、一つの国を滅ぼした魔女ですわ!!
                陛下!陛下はその魔女に騙されているのです!!」
                サラ・イサフェナ姫は、侍女を振り切るように前へ出ると、
                ロイに向かって叫ぶ。
                「その姫は、【鋼姫】!!その魔力で、陛下を誑かし、
                この国を乗っ取るつもりです!!」
                サラ・イサフェナ姫の言葉に、辺りが、一層ざわめく。
                「・・・・ジャン兄・・・っ!!」
                今にも飛び出さんとするアルの腕を、ハボックは
                強い力で止めた。
                「・・・・大丈夫だ。」
                じっとハボックの見つめている方向を見ると、そこには、
                落ち着いた表情のロイとエドがいた。恐らく、誰かが
                エドを【鋼姫】と糾弾するのを、覚悟していたのだろう。
                2人は、何かを見定めるように、静かに王女を見つめていた。
                その毅然とした2人の姿に、ハボックは大丈夫と判断したのだった。
                「陛下!これをご覧下さい!!」
                王女は、ゆっくりと顔に当てていたタオルを外す。
                「「!!」」
                王女の顔半分が、醜く爛れており、そのあまりの酷さに、
                中には、気を失うものが続出する。驚きに目を見張るエドに、
                王女は再び顔にタオルを当てて隠すと、ニヤリと笑う。
                「【鋼姫】は、大層嫉妬深い姫とか・・・・。」
                サラ・イサフェナ王女は、一歩エドに近づく。
                「私の美貌を妬んで、私の顔を魔法で醜くさせたのでしょう!!」
                サラ・イサフェナ王女の言葉に、周りの人間が、一斉に
                非難めいた視線をエドにぶつける。今や、完全に場の雰囲気は、
                サラ・イサフェナ王女に味方をしていた。王女に同情の目を、
                そして、エドに対しては、憎しみの目を向ける。今度は自分に
                危害が加えられるかもしれない。その前に、エドを排除しようと
                する場の雰囲気に後押しされるように、王女は、ロイに縋りつく。
                「陛下!!どうか【鋼姫】を捕らえて下さい!!そして、
                私の【呪い】を解いて下さいませ!!」
                泣きながら、ロイにきつく抱きつく王女を、ロイは感情の篭らない
                目で見下ろすと、冷たい声を放つ。
                「証拠は?」
                「陛・・・下・・・・?」
                ロイの尋常でない怒りを感じたのか、王女は、恐る恐る顔を上げて
                ロイの顔を見上げる。
                「我が妃を・・・・・このフレイム王国の王妃に対して、そこまで
                言うのであるならば、皆が納得する証拠があるのだろうな?」
                射殺さんばかりの鋭い眼光のロイに、サラ・イサフェナ王女は、
                ヒッと声を上げて、ロイから離れると、ガクガクと身体を震わせる。
                ゆっくりと近づいてくるロイに恐怖を感じた王女は、エドを
                指差しながら叫ぶ。
                「そ・・その黄金の髪と瞳が何よりの!!」
                「・・・・証拠と申すのか・・・?」
                ククク・・・と低く笑うロイに、王女は漸く自分がロイの逆鱗に
                触れた事に気づき、顔色を失う。
                「この大陸で、黄金の髪と瞳を持つ娘は、珍しくはない。」
                そこで言葉を切ると、王女を睨みつける。
                「王女の主張だと、その者全てが【鋼姫】であるという事になる
                な。・・・・確たる証拠もなしに、我が妃を罪人扱い!許せると
                思うのか!!」
                ロイの一喝に、サラ・イサフェナ王女は、恐ろしさのあまり、
                その場に座り込み、ガクガク震える。戦場において、敵の兵士
                達を一喝で退けた逸話を持つロイに、蝶よ花よと育てられた
                温室育ちの姫が対抗できるはずもなく、ただ身体を震わせる
                事しかできない。シーンと静まり返った空気に、1人の男の声が
                響く。
                「・・・・・・しかし、王妃はエルリック王家の出身。」
                その言葉に、ロイは鋭い視線を向ける。ゆっくりと人垣から出てきた
                のは、ゼノタイムの第一王子、ラッセル・トリンガムだった。
                ラッセルは、興奮を抑えきれないと言った顔で、ゆっくりと前に
                進み出ると、ロイからサラ・イサフェナ王女を守るように、
                間に入ると、片膝をつき、頭を垂れる。
                「ご無礼をお許し下さい。マスタング王。王妃様はエルリック王家
                ご出身。ですからつい重ねてしまうのです。遥かなる昔、
                エルリック王家の姫君が一つの国を滅ぼした昔話を・・・・・。」
                チラリと意味ありげにエドを見るラッセルに、ロイはムッとして、
                ラッセルの視線からエドを隠すように、その前に立ちはだかる。
                「伝説と現実世界の区別もつかないと?」
                「・・・・いえ、ただ・・・・人の心は弱いものです。」
                両者の間で、激しい火花が飛び散る。今のラッセルは、
                物語の主人公と同化しており、自分が【鋼姫】を追い詰めている
                気になって、気分が異様に高揚していた。だからだろう。
                普段なら萎縮するロイに恐れることなく、立ち向かえたのは。
                一触即発の事態は、意外なところで、破られる事になる。
                それまで黙って事の成り行きを見守っていたエドが、
                ゆっくりと王女に近づくと、座り込んでいる王女の目線に合わせる
                ように、座り込んで、優しく王女からタオルを取り上げた。
                「ヒッ!!触らないで!!」
                狂ったようにエドに対して暴れる王女に、エドは優しく語り掛ける。
                「大丈夫。傷を見るだけ。」
                エドはゆっくりと手を王女の爛れた皮膚を見る為に、王女の
                顎にかける。恐いくらい真剣なエドの表情に、王女は
                呑まれたように大人しくなった。暫く傷の具合を丹念に見ていた
                エドは厳しい表情で王女に尋ねる。
                「王女。顔に塗った薬はまだ残っていますか?」
                その言葉に、王女は絶句し、周りの人間は困惑気に顔を見合す。
                「・・・・・・・・。」
                黙ったまま俯く王女に、エドは更に言葉を繋げる。
                「王女!事は一刻を争うのです!!早く解毒剤を作らなければ、
                一生この顔のままです!!」
                エドの言葉に、王女は取り乱す。
                「そんな!嘘よ!!だってあの男は、一週間で元通りになるって!!」
                「あの男・・・・?」
                王女の言葉を聞きとがめ、ロイは王女に詰め寄る。王女は、自分の
                失言に気づき、慌てて口に手を当てる。
                「やはり、貴様の狂言だったのだな!!」
                ロイの言葉に、その場にいる人間は息を呑んだ。それはラッセルも
                例外ではなく、思わず王女の顔を凝視する。皆の視線に耐えられ
                なかった王女は、泣きながら事の真相を白状した。
                「わ・・・私は・・・どうしても・・・陛下の妃に・・・・なりたくて・・・。
                そしたら・・・あの・・男が・・・・・。」
                「あの男とは誰だ!!」
                ロイの叱咤に、王女は更に泣きじゃくる。
                「存じません!!昨日初めて出会ったのです!頭から黒いフードを
                被って、顔が見えませんでした。男は・・・・私に薬を・・・差し出した
                のです。この薬を塗れば、一週間、顔が爛れたようになると。
                そして、王妃を【鋼姫】だと騒げば、陛下の目が醒め、私を・・・・
                必ず王妃にする・・だろう・・と・・・・。薬が切れるまでに、王妃を
                陥れろと・・・・・・・。」
                本格的に泣き出した王女に、ロイは冷たく一瞥すると、兵士に
                命じる。
                「この城にいる人間を徹底的に調査しろ!不審者は逃がすな!!
                それから、マルコーを直ぐに呼べ。」
                的確に指示を出し終えると、ロイは謁見の間で、固唾を飲んで
                事の成り行きを見守っている各国の使者達を見回す。
                「聞いての通りだ。王女に毒を渡した犯人が見つかるまで、
                全員、この城に留まるように。」
                有無を言わせないロイに、全員は深々と頭を下げ、了承の意を
                示した。





                「これは、恐らくクレゾラルによる刺激性皮膚炎でしょう。」
                王女の診察を終えたマルコーは、ロイの執務室で、ロイとエドに
                報告する。執務室は、他にホークアイとハボックとアルフォンス
                がおり、固唾を飲んで、マルコーの報告に耳を傾けていた。
                「少しだけ残った薬から、クレゾラル成分を含む、ルッカーラ草を
                検出しました。」
                マルコーの言葉に、エドが難しい顔で考え込む。
                「やっかいだな・・・・。まさか、ルッカーラ草とは・・・・。」
                その言葉に、ロイはエドを見る。
                「エディ?」
                訝しげなロイに、エドは青褪めた顔で説明する。
                「ルッカーラ草を中和させる薬には、絶対に欠かせない薬草が
                あるんだ・・・・。それが、オリヴェーナ草。でも、それが生息している
                地域はすごく限られていて・・・・しかも・・・・オリヴェーナ草は
                デリケートな草だから、運良く見つかるかどうか・・・・・。」
                考え込むエドに、ホークアイは尋ねた。
                「エドちゃん。生息している地域は、どこなの?もしかしたら、その
                国の使者がここに滞在しているかもしれないわ。」
                事情を知っている使者ならば、フレイム王国が直接その国の王へ
                使者を送るよりも、早く手に入れることが出来るかもしれない。
                ホークアイの言葉に、エドは確か・・・と、ある国の名前を告げる。
                「確か・・・・ゼノタイムだった気が・・・・。」
                エドも不確かな知識なのだろう。縋るように、マルコーを見る。
                「はい。確かに、ゼノタイム王国にしか生息しておりません。」
                マルコーの言葉に、ロイが顎に手を当てて考え込む。
                「確か・・・ゼノタイム王城の温室には、大陸のありとあらゆる
                薬草が育てられているはずだ。たぶん、その中にあるに違いない。」
                自国にしかない貴重な薬草なら、絶対にあるだろうとロイは
                言った。
                「よし!!ゼノタイム王国なら、ここから馬を飛ばせば、丸二日
                で行けるよな!!急がないと!!」
                エドは嬉々として椅子から立ち上がると、そのまま部屋を出て行こう
                とするが、その前に、ロイに抱き寄せられる。
                「ふみゃ!!離せよ!ロイ!!」
                ジタバタと暴れるエドを、ロイは更に腕の中に抱きしめる。
                「一体、君はどこへ行く気なんだい?エディ?」
                ロイの言葉に、エドはすっと目を反らせると、小声で呟く。
                「えっと・・・その・・・サラ・イサフェナ王女へお見舞いに・・・。」
                「その後は?」
                ニッコリと微笑むロイに、エドは更に小声で呟く。
                「ちょっと・・・・ゼノタイムまで・・・・おつかいに・・・・。」
                「エディ!!」
                ギュッときつくエドを抱きしめると、ロイは不機嫌そうに言う。
                「君は私の妃で、このフレイム王国の王妃だ!!この城から
                出る事・・・・いや!私から離れるなど、絶対に許さん!!」
                離すまいと、ぎゅうううううううとエドの身体を抱きしめるロイに、
                エドが酸欠で顔を青くなる。それに慌ててホークアイはロイの
                後頭部に、ハリセンの一撃が見事に決まる。
                「リザ姉様〜。」
                「もう大丈夫よ!!エドちゃん!!」
                よほど苦しかったのだろう。半分涙目のエドを、ホークアイは
                ロイから奪うと、優しく抱きしめる。
                「エディ〜。」
                情けない顔でエドに手を伸ばすロイとエドの間に割り込むように、
                アルが身を滑り込ませると、エドの両手を握り締める。
                「でも、姉さんがわざわざ行くことないよ!!あんな王女の為
                なんかに!!」
                アルにしてみれば、今回の件は王女の自業自得。姉を散々
                陥れようとした王女に対して、もはや一片の同情もない。
                本当ならば、己の浅はかさを戒める為にも、あの顔のまま
                一生を過ごせば良いとまで、考えていた。
                「でも・・・アル。王女はそれだけ必死だったんだ・・・・。」
                どうしてもロイに自分を見て欲しかった。良く知りもしない
                男から貰った薬に頼るほど。
                エドの言葉に、今度はホークアイが厳しい顔でエドを
                諌める。
                「エドちゃん。それは違うわ。あの王女は、陛下に対して、
                これっぽっちも愛情なんて持っていません。王女が
                欲しいのは、陛下の愛情ではなく、このフレイム王国の
                王妃という地位。そして、権力に目が眩んでいるだけの
                こと。エドちゃんが気にする事はありません!!」
                きっぱりと言い切るホークアイに、エドは目をパチクリする。
                「・・・・エディ。私を愛しているのは君だけで、君を
                愛しているのも、私だけなのだよ?」
                ホークアイにキッパリと男としての魅力がないと断言された
                ロイは、ムッとしながらも、エドを自分の腕の中に収めようと、
                手を伸ばすが、それよりも前に、ホークアイのハリセンが
                ロイの手を叩き落す。
                「陛下!エドちゃんを愛しているのは、陛下だけではありません!」
                訂正して下さいと凄むホークアイの横では、ウンウンと大きく
                頷く義弟のアルフォンスがいる。その後ろでは、ハボックまでも
                便乗するかのように、さり気なくエドの肩に手を回す。
                「そっ!姫さんは、みんなに愛されてるって。だから、みんな
                心配しているんだよ。エド。」
                ハボックは、ふと真剣な表情をエドに向ける。
                「ジャン兄?」
                首を傾げるエドに、ハボックは諭すように両肩に手を置く。
                「いいか。今のお前の立場は、ただの王女ではなく、
                一国の王妃だ。それに伴う危険は、王女時代より何倍も
                高い。もしもお前に何かあってみろ。下手すると戦争が
                起る・・・・・・。」
                ハッと息を呑んで、悲しそうな顔をするエドを、ロイは後ろから
                優しく抱きしめる。
                「エディ。私は必ず君を守る。・・・・・だから側から離れないで
                くれ・・・・・。」
                ギュッとエドの身体を抱きしめるロイに、エドは小さくコクンと
                頷いた。
                「わかった・・・・。大人しくここにいる。」
                エドの言葉に、ロイ達はホッと表情を綻ばせる。
                「じゃあ、俺、王女のお見舞いに行ってくる!1人じゃ不安だと
                思うし!!」
                エドは、顔を上げると、ロイの腕をすり抜けて、パタパタと部屋を
                飛び出していく。
                「エディ!?」
                一瞬の事で、そのままエドを離してしまったロイが、慌てて
                エドを追いかけようとするが、その前に、ホークアイに阻まれる。
                「陛下!エドちゃんは、私が追いかけます!それよりも、薬草の
                手配を頼みます!」
                慌てて後を追いかけるホークアイの後姿を見ながら、ロイは
                言い知れぬ不安を感じながらも、指示を出すべく、マルコーを
                伴い、ラッセルのいる貴賓室へと向かう。
                「なぁ、姫さん、大人しくしていると思うか?」
                「なんせ・・・姉さんだし・・・・。」
                後に残されたハボックとアルフォンスは、顔を見合わせると、
                ため息をつく。
                「でも、犯人の目的は、明らかに【鋼姫】だ。だからこそ、姫
                には、ここで大人しくしてもらいたいんだが・・・・。でもな・・・・・。」
                ハボックは腕を組んで考え込む。
                「元職場だからと言う訳ではないが、ここの警備は大陸一を
                誇る。不審者が簡単に出入りできる訳じゃない。」
                以前、賢者の石を盗み出そうとして、数名とここに潜り込むのに、
                相当苦労したハボックだった。キング・ブラッドレイの協力が
                なければ、未だに城に潜り込むことすら出来なかっただろう。
                「では、犯人は、各国の使者の中に?」
                アルの言葉に、ハボックは大きく頷く。
                「多分な・・・・。だが、犯人の真意が良く判らない。エドを
                王妃の座から降ろそうとして、一体何のメリットがある?」
                あのロイのエドへの激愛振りを見てもなお、エドを王妃の座から
                引き摺り降ろすメリットが思いつかない。仮にエドを犯人に仕立て
                上げる事に成功したとしても、逆上したロイが何をするか
                判らない。下手すると、大陸全体を巻き込んだ戦争を起こす
                かもしれない。実際に、エドを傷つけたと、昨日からの
                王女に対するロイの怒りは凄まじい。エドが取り成さなければ、
                直ぐにでもロイはラグール王国を滅ぼそうとする勢いだった。
                「とりあえず、犯人の出方が判らない今、姫さんには、
                目を離さない方がいいだろう。」
                「そうですね・・・・。」
                頷きあう2人だったが、それが既に手遅れである事に
                気づく事になる。
                「エドちゃんがっ!!」
                数分後、青い顔して、エド行方不明を知らせに、
                ホークアイが執務室へと荒々しく入ってくる事になる。







                「ごめん・・・みんな・・・・。」
                エドは、長い髪を後ろで一本の三つ編みにすると、
                抜け出してきた城を振り返る。今のエドの服装は、
                王妃の・・・ましてや、女の格好ではなく、つい最近まで
                慣れ親しんできた【エド】の服装、つまり、男装をしていた。
                「これは、【鋼姫】を狙ったもの。だから、犯人を捕まえられる
                のも、俺だけなんだ・・・・・。」
                エドは深く城に向かって頭を下げると、振り切るように駆け出した。
                「急いで先回りしなきゃ!!」
                エドは逸る気持ちのまま、走るスピードを上げた。