ホー・・・・ ホー・・・・・・
フレイム王国の中心地に聳え立つ、ロイ・マスタングの居城の
中庭にある一本の木の枝に、一羽の梟が舞い降りる。
ホー・・・・ ホー・・・・・・
何かを探すように梟は、その首を何回か回していたが、やがて、
木の下から聞こえる声に気づくと、ゆっくりと枝から飛び降りる。
木の下には、女官が立っており、右腕を降りてきた梟に向けた。
すると、梟は慣れた様子で女官の腕に止まると、ゆっくりと毛繕いを
始める。女官は、梟の頭を撫でると、梟の足に括りつけてある
手紙に手を伸ばそうとしたが、それよりも前に後ろから肩を掴まれ、
のろのろと感情の篭らない眼を向ける。
「王妃付きの女官が、こんな夜更けに、こんなところで何をしているの?」
恐いまでの表情のホークアイの姿をチラリと見ると、女官は素早く
ホークアイの手を振り払い、隠し持っていたナイフを深々と自分の胸に
突き刺そうとする。
「はい。そこまで!」
だが、ナイフは目的を果たす前に、第三者の手によって、阻まれる。
「ホークアイ副隊長〜。こいつ、やっぱ催眠術で操られてるぜ。」
女官の顔を覗き込むと、男はホークアイに肩を竦ませる。男の格好は
近衛隊の服装をしているが、雰囲気は町のチンピラである。そんな
男に、ホークアイは短く命じる。
「そう。やはり陛下の読みは正しかったと言う訳ね・・・・。グリード、
彼女の暗示は直ぐに解けるかしら?」
ホークアイの言葉に、男ーーーグリードは、ニヤリと笑う。
「これぐらい訳ねーな。」
「そう。なら、直ぐに暗示を解いて、私の所へ。」
男は、敬礼すると、女を連れて、その場を後にする。2人の後姿を
見送っていたホークアイは、木の上で、事の成り行きを見守って
いた梟に気づくと、その優美なる腕を上げる。
「いらっしゃい。」
にっこりと微笑むホークアイに、梟は困惑気味な顔で、クルクル
頭を回す。そんな梟の様子に、ホークアイはピクリと口元を引き攣らせる
と、空に向かって銃をぶっ放す。
「さぁ、いらっしゃい。」
怯える梟に、ホークアイはさらに微笑む。これ以上ホークアイに逆らっては
いけないと、梟はガタガタ震えながら木から飛び降りると、ゆっくりと
ホークアイの腕に止まる。
「良い子ね。」
ホークアイはすっかり怯えている梟の頭を優しく撫でると、足に
括りつけられている手紙を取り、梟を空へと放つ。
「・・・・・・やはり。」
険しい表情で手紙に眼を走らせると、ホークアイは踵を返した。
「あっ、リザ姫!ロイ義兄さんからの手紙が届きましたよ。」
ホークアイが厳しい表情でロイの執務室に戻ると、アルフォンスが、
白梟にエサを与えていた。ロイの机の上には、白梟が運んだと
思われる書簡が置かれている。
「こちらも。陛下の読み通り、犯人からの手紙が届いていたわ。」
「では、共犯者は捕まえたのですか?」
途端、アルの顔に緊張が走る。
「捕まえられたのは、暗示を掛けられた、王妃付きの女官
だけ。真の共犯者はまだだけど・・・・でも、時間の問題よ。」
ホークアイの言葉に、アルは苛立ちを隠せない。
「王妃付きの女官・・・・それほどまでに、犯人は、姉さんを犯人に
仕立て上げたいのか!!」
吐き捨てるように言うアルに、ホークアイは、手にした手紙を
アルに見せる。
「犯人から共犯者に宛てた手紙よ。どうやら、犯人は、陛下が城に
いない間、エドワードちゃんをどうしても犯人に仕立て上げたかった
ようね。」
「でも、犯人の予想に反して、姉さんまで城から出てしまった。」
アルはホークアイから手紙を受け取ると、さっと眼を走らせる。
「ええ。だから犯人も慌てたのね。手紙に、計画を実行せず、
利用する女官を・・・・殺せと書いてあるわ。」
ホークアイは、ゆっくりとロイの机に近づくと、ロイからの書簡を手に
取る。
「陛下とドクターの報告を見る限り、容疑者は2人。そのうちの
1人が最有力とあるけど・・・・。」
ゼノタイムの人間は、この王城にはいないはず。では、共犯者とは
一体誰なのか・・・・・。ホークアイは、今知り得た情報を手紙に
記し、ロイの判断を仰ごうと、ペンを取ろうとした時、執務室に
グリードと先程の女官が入ってきた。女官は、暗示が解けたのか、
眼を真っ赤にしながら、その場に蹲る。
「申し訳ございません!!私が王妃様を裏切る事をするなんて!!」
泣いて興奮する女官を、ホークアイは優しく慰める。
「あなたの意志でないことは、陛下も王妃様もよくご存知よ。安心
しなさい。それよりも、王妃様の為にも協力してほしいの。」
ホークアイの言葉に、女官は、何度も大きく頷く。
「エドワード様の為ですもの!!私!何でもやります!!」
やる気十分の女官に、ホークアイは嬉しそうに微笑む。
「ありがとう。では、早速だけど、誰に暗示を掛けられたか、覚えて
いる?」
ホークアイの言葉に、女官は眼を閉じて必死に思い出そうとするが、
悲しそうに首を横に振る。
「いえ・・・顔までは・・・・・。確か頭からすっぽりとフードを被って
いて・・・・・。」
「そう・・・・。多分、王女に毒を渡した男ね・・・・。」
ホークアイの言葉に、女官はキョトンとした顔で首を横に振る。
「男の方・・・・ですか・・・・?いいえ?女性でしたが・・・・。」
女官の言葉に、ホークアイの眉が顰められる。
「それは、本当なの!?」
「はい!声が女性でした。それから・・・・あの言葉・・・・。」
女官は考え込むように、目を伏せる。
「言葉?」
訝しげなホークアイに、女官は思い出しながら言った。
「はい・・・・。王妃様は、紅い石をお持ちですか?と・・・。」
「紅い・・・・石?」
ホークアイの目が大きく見開かれる。後ろにいるアルフォンスが、
アッと小さく声を上げる。
「・・・・それであなたは、何と?」
ホークアイの言葉に、女官は悲しそうな顔で俯く。
「申し訳ございません。そのフードを被った女性を見た途端、頭に
靄が掛かったように、何も分からなくなって・・・・自分でも何と
答えたのか・・・・・。」
「そう・・・。分かったわ。ありがとう。ゆっくり休んで。」
ホークアイの労いの言葉に、女官は、慌てて頭を下げる。
「いえ!皆様にご迷惑をおかけして、申し訳ありません。その上、
何も覚えていないなんて・・・・・・。」
シュンとなる女官に、ホークアイは首を横に振る。
「いいえ。共犯者が女性であるという事が判っただけでも、大収穫
だわ。・・・・後、気づいた点はないかしら?」
ホークアイの言葉に、女官は、そう言えばと顔を上げる。
「気のせいかもしれませんが・・・・・。フードを被った女性と、サラ・イサフェナ
王女が使っている香水が似ていたような気がします・・・・。それに、
暗示が掛かっている間、私はずっとサラ・イサフェナ王女の元に
行かなければという、想いに囚われていました。」
女官の言葉に、ホークアイとアルは顔を見合わせる。
ここにきて、再び王女の名前が出てきた事に、ホークアイは眉を顰める。
「・・・・・共犯者が王女ということでしょうか・・・・・・。」
青褪めた表情のアルに、ホークアイは首を横に振る。
「王女本人か・・・それとも、ラグール王国の中の誰かか・・・・・。」
ホークアイはロイからの書状に、もう一度眼を通す。
「それに、犯人と共犯者の接点も分からないし・・・・・・。いえ!あったわ!!」
ホークアイがロイの書状に書かれているある文章を指差す。
「もう一つの【鋼姫伝説】?」
書状を覗いていたアルは、ホークアイが指差す一文を読む。
「ええ。陛下の書状によると、ラッセル王子はもう一つの【鋼姫伝説】を
知っているそうね。」
「・・・・つまり、そのもう一つの【鋼姫伝説】を知っている人間が、この事件の
関係者・・・・・ということに?もう一つの【鋼姫伝説】とは、一体・・・・・。」
アルの言葉に、ホークアイは大きく頷く。
「私たちが知っている【鋼姫伝説】の後日談的な話らしいわ。」
「あの・・・・・。」
それまで、大人しく控えていた女官が、恐る恐る手を上げる。
「あ・・・あの・・・・その話とは、もしかしたら、鋼姫に滅ぼされた
国の王子が1人生き残って、同じく生き残った民達と共に、
旅をするというものでは?」
女官の言葉に、ホークアイに緊張が走る。
「・・・どこで、それを・・・・・。」
もしかしたら、最初からこの女官が、敵だとしたら、自分は大失態を
犯した事になる。緊張で顔を強張らせるホークアイに気づかず、女官は
神妙な顔で答える。
「サラ・イサフェナ王女が、この城に到着して直ぐに、王妃様からの
お花をお届けしたときの事です。」
遠方からわざわざ自分達の婚儀に来てくれたという感謝を込めて、
エドは使者達にお礼として、花を贈っていた。女官は、その花を
サラ・イサフェナ王女の部屋に運んだ時、丁度王女は身支度をしていた
のだった。
「花を活けながら、王女と向こうの女官の話が聞くとはなしに聞いてしまった
のです。王女の髪を梳かしながら、女官が昔話を話していた事が、
とても印象的でした・・・・・。」
まるで小さな子どもに言って聞かせるような口調で、その女官は
王女に話をしていた。鋼姫がいかに嫉妬深く酷い姫なのかを。
そして、国を追われた人々のいつか故国に帰りたいと言う願いを。
そして、王妃のエドワードが、【鋼姫】と同じエルリック王家の出である事を。
「まるで、王妃様が【鋼姫】のような言い草には、本当に頭にきましたわ!!」
その事を思い出したのか、女官は、顔を真っ赤にして怒り出す。
「・・・・・なんですって?」
ピクリとホークアイの眉が跳ね上がる。
「そうなんです!リザ姫様!!私、すごく悔しくて!!王妃様の素晴らしさを
全く知らないくせに、ただエルリック王家のご出身だから辱めるなんて!!」
だから、花を活け終わった足で、ホークアイに報告しようと、足早に廊下を
歩いていた所で、後ろから呼び止められたのだ。フードを被った女に。
「・・・・・そうだったの。分かったわ。ラグール王家の人達には、陛下から
厳重に注意をしてもらうわ。ありがとう。もう、下がってもいいわ。それから、
あなたは、あまりラグール王家の側には近寄らない方がいいわ。また
何かあるといけないから。」
一礼して部屋を出て行く女官を見送ると、ホークアイは、グリードとアルフォンスを
見る。
「まさか、ラグール王家まで関わっているとはね・・・・・。」
ため息をつくホークアイに、グリードは肩を竦ませる。
「とりあえず、他にも暗示に掛けられている人間がいないかどうか、チェック
しているが・・・・。厄介な事になったもんだぜ。」
もしも、他国の使者の中にも暗示が掛けられている者がいれば、チェックは
難しいと、グリードは腕を組むと唸る。
「全て陛下のお考え通りなら、そろそろ犯人の方が動き出すはずだわ。
後は、共犯者の割り出しね。とりあえず、ラグール王家の中にいる共犯者に
罠を掛けてみましょうか。」
ホークアイは、犯人からの手紙を手に取ると、ニヤリと笑った。
コンコン・・・・。
その音に、サラ・イサフェナ王女の髪を優しく梳いていた女官は、
ゆっくりと椅子から立ち上がると、扉の前へと歩く。少しだけ開けられた
扉の隙間から、王妃付きの女官の姿を確認した女官は、苛立ったような
声を上げる。
「遅かったじゃないの!!」
苛立つ女官に、王妃付きの女官は無言で手紙を差し出す。それに
女官は眉を顰めつつも、受け取った手紙を素早く読むと、ギリリと唇を
噛み締める。
「計画は中止ですって!!ここまでくるのに、一体どれだけの時間を
費やしたと思っているのよ!!」
女官は、感情の赴くままに、手にした手紙をきつく握り締める。
「・・・・かといって、命令は絶対だし・・・・・。」
肩で息を整えて気持ちを落ち着かせた女官は、未だ廊下に立ったままの
王妃付きの女官に視線を移すと、部屋に入るように促す。
パタンと閉じられた扉に背を預けていた女官は、自分に背中を向けて
微動だにしない王妃付きの女官にニヤリと笑いかける。
「・・・ごめんなさいね。あなたに恨みはないのだけど・・・・。これも命令
なの。」
そう言って隠し持っていたナイフを振り上げる女官の腕を、荒々しく扉を
開けて入ってきたグリードが押さえ込む。
「離しなさい!!」
暴れる女官に、殺されそうになった王妃付きの女官が、ゆっくりと近づくと、
掛けてあったメガネを取りながら片膝を付き、女官に目線を合わせると、
ニヤリと笑う。
「詳しいお話を、聞かせて頂きましょうか?」
女官は、そこで漸く目の前の王妃付きの女官が、暗示に掛かっていない
という事実に気づき、サッと顔色を変える。
「何?何の騒ぎなのです!!」
そこで、騒ぎに眼を醒ました、サラ・イサフェナ王女が、ゆっくりと上体を
ベットから起こすと、目の前の光景に、悲鳴を挙げる。
「王女様!お助け下さい!!」
王女が眼を醒ました事に気づいた女官は、急いで王女に助けを求める。
「あなた方!!私の寝所に許可なく立ち入り、尚且つ、ライラを!!
私の乳姉妹を取り押さえるなど、何と言う無礼な!!この事は、
ロイ様もご存知なのですか!!」
王女の一喝に、ライラの側にいた王妃付きの女官がスクッと立ち上がる
と、王女に対して敬礼する。
「失礼致しました。サラ・イサフェナ王女殿下。私はリザ・ホークアイ。
近衛隊副隊長の任にある者です。」
ホークアイは、ツカツカと王女に近づくと、ライラが握り締めていた手紙を
王女に見せる。
「これは・・・・?」
訝しげな王女に、ホークアイは事務的に告げる。
「今回、王女様に毒を持った犯人から共犯者に宛てた手紙です。その事で
そちらの女官に詳しい話を聞こうとしたところ、抵抗されたので、止むを得ず。」
ホークアイの言葉に、王女は、乳姉妹に戸惑う視線を送る。
「王女様!!嘘です!!私は知りません!!」
悲痛な叫びをするライラに、王女は怒りを露にした眼をホークアイに向ける。
「私の乳姉妹を陥れる気なのですか!!」
王女の言葉に、ホークアイの肩がピクリと反応する。
「・・・・最初に陥れようとしたのはどなたですか?そんなあなたを助けようと、
王妃様は奔走なさっているのに・・・・!!それに、その手紙をお読み下さい。
計画が実行されていれば、今頃あなたは死体となっていたのですよ?」
その言葉に、ギョッとして慌てて王女は手紙を読む。
「・・・・・サラ・イサフェナ王女暗殺計画を中止・・・・・。」
信じられないと、己の乳姉妹を凝視する王女に、ライラは涙ながらに
訴える。
「私は存じません!!みんなでっち上げです!!どこに証拠が!!」
騒ぐライラに、グリードがニヤリと笑う。
「証拠ならあるぜ?」
パチンと指を鳴らすと、廊下から数名の人間が現れる。その中の1人から
小さな小箱を受け取ると、王女に見せるように、掲げる。
「うちの隊員の中に機械弄りが好きな奴がいてな、これは特に自慢の一品
で、なんと、人の声を記録する箱だぜ!」
そう言って、箱の側面にあるボタンを押すと、先程のライラの言葉が部屋に
流れ出す。
「ライラ・・・・あなた・・・・・。」
絶望的な顔をする王女に、ライラは舌打ちをすると、グリードの腕を振り払って
廊下へと飛び出す。
「彼女を捕らえなさい!!」
ホークアイの命令に、慌ててグリードがライラの後を追いかけようとするが、
その前に、ライラの悲鳴が聞こえた。
「ちょっと邪魔するよ・・・・・・。」
ユラリと怒りのオーラを撒き散らしながら、ドレッドヘアの女性が、ライラを
拘束しながら、部屋の中へ入ってきた。
「あなたは・・・・・・。誰・・・?」
見知らぬ女性に、ホークアイを初めとして、近衛隊の面々も緊張した
面持ちで、女性に対して警戒する。女性は、拘束していたライラを
軽く突き飛ばすと、ホークアイに向かってニヤリと笑う。
「主婦だーーーーーっ!!」
胸を張って答える女性に、その場にいた人間は、呆気にとられて、
動く事が出来なかった。
「ロイ!ロイ!!あの湖、すごく綺麗!!」
馬車の窓から見える光景に、ロイの膝の上に座っているエドが、
眼を輝かせて指差す。
「私にとっては、君の方が綺麗だよ。」
ロイは、そう言うと、エドの頬に口付ける。途端、真っ赤な顔で
俯く新妻に、ロイは声を立てて笑う。そんなラブラブオーラを撒き散らす
2人に、いい加減我慢も限界なラッセルは、これ見よがしに、大きな
ため息をつく。それに気づいたエドは、居たたまれない気持ちで、
ラッセルに声を掛ける。
「ごめん・・・な?煩かった?」
「いえ・・・。ただ、病に苦しむサラ・イサフェナ王女の事を思うと、
はしゃいでなどいられませんので。」
つっけんどんなラッセルの言葉に、見る見るうちにエドはシュンと
なった。それに慌てたのはロイだった。内心あんな王女の為に
エドが心を痛める事はないと思っていただけに、エドの心を
傷つけたラッセルに、怒りが込み上げてくる。
「ラッセル。エディは君を楽しませようと、わざと明るく振舞っている
のだぞ?」
「ううん!!俺、不謹慎だった。ごめんなさい。ラッセル王子。誰だって
愛する人の具合が悪かったら、悲しいよな・・・・・。」
ふるふると首を横に振るエドに、ラッセルは唖然とした眼を向ける。
一体、いつ自分がサラ・イサフェナ王女を好きだと言ったと言うのだ。
勝手に勘違いしているエドを、信じられないものを見たような眼を
向けるラッセルだったが、エドはそんな事に気づかない。ますます
シュンと項垂れると、ロイの首に腕を回した。
「俺だって、ロイが具合悪かったら、すごく悲しいもん!!」
ギューッとしがみ付くエドを、ロイは幸せそうに抱きしめる。
「私もそうだよ!!君が側にいないだけでも、心臓が締め付けられる
ように痛いのに、ましてや、病で苦しむなんて事になったら、私の
方が先に死んでしまう!!」
ロイの言葉に、エドは驚いて顔を上げる。
「駄目!!ロイ死んじゃ嫌〜!!」
ポロポロと涙を流すエドに、ロイは蕩ける笑みを向けると、優しく
エドの涙をペロリと舐める。
「だったら、約束して欲しい。私の側から決して離れないと。
絶対に病になどかからないと・・・・・・。」
「うん!俺、絶対にロイの側から離れないし、病気になんか
ならない!!だから、ロイも俺と約束!!絶対に病気になんか
なるな!!」
馬鹿ップル全開。再び2人だけの世界を築き、固く抱きしめ合う2人に、
ラッセルは、もう二度と2人とは話さないと、固く心に誓うのだった。
「早く城に着かないかな・・・・・。」
ラッセルの呟きは誰の耳にも届かなかった。