リトル・まぁあめ(豆)エド

                    第8話

 

 

            


            「全く!逃げ足の速い!一体エドワードちゃんをどこへ
            連れて行く気なの!!」
            慌ててロイを追いかけたリザだったが、直ぐに姿を見失い、
            途方にくれる。ここは、自国ではない。怒りに任せて歩いて
            いるうちに、恥ずかしい事だが、道に迷ってしまったようだ。
            「冷静沈着がウリの私としたことが!!」
            なんて失態!!と、頬を紅く染めながら、何とか自力で
            戻ろうと、角を曲がったところで、前から来た人間にぶつかって
            しまった。
            「きゃあ!!」
            「うわっっ!!スンマセン!!」
            尻餅をつくリザを、慌てて抱き起こしたのは、ハボックだった。
            「すみません!よく見てなくて・・・。お怪我はありませんでしたか?」
            「え・・ええ。こちらこそ、よく前を見てなくて・・・・・・あら?
            あなたは、確か・・・・・ハボック・・・さん・・・?」
            あのロリコン変態王子の側近の・・・・と呟くリザの言葉を途中から
            聞いていないのか、ハボックはやたらと感激している。
            「うわっ!光栄です!!あなたに名前を覚えられていたなんて!!」
            まるで背中に羽根でも生えているかのように、ハボックは一人
            舞い上がっている。
            「あの・・・悪いけど、手を貸してほしいのだけど・・・・・。」
            「えっ!!あっ!すみません!!気がつかなくて!!」
            ハボックは、手をゴシゴシ服で拭くと、真っ赤な顔でリザに手を
            差し出す。
            「ありがとう。」
            ニッコリと微笑むリザに、それだけで、ハボックは茹蛸のように
            真っ赤になって、もう、一生手は洗いません!!とドサクサに
            紛れてリザの手を握り締める。




            「ほら、私の言った通りだろ?あの二人は、とても愛し合って
            いるのだよ。」
            傍から見ると、真っ赤な顔で、手を取り合っている、初々しい
            カップルに見える、リザとハボックの様子を、遠くの植え込みの
            影から伺っていたロイは、肩に乗っているエドに話しかける。
            実際には、助け起してもらったリザは、ハボックがロイの側近と
            いう事もあり、ロイがどこに言ったのか、激しい口調で
            ハボックに問い詰めているのだが、上気した頬のリザの様子に、
            遠くからで、二人の会話が聞こえない分、エドはロイの
            言った事をそのまま信じ込んだ。
            「あの二人には、幸せになってもらいたいんだ。エディも
            そう思うだろ?」
            ロイの言葉に、エドはコクンと頷く。
            「でも、ロイは?ロイはリザ姉様の事、好きじゃないの?」
            心配そうに首を傾げてロイに訊ねるエドに、内心、好きどころか、
            エドを挟んで天敵同士なのだよと呟くが、そんな事を言える
            訳もなく、ロイはニッコリと微笑む。
            「何度も言っているがね、私が愛しているのは、エディ、
            君だけなのだよ?」
            「でも!でも!俺、人魚だし・・・・・。」
            一緒にいられないと、フルフルと首を横に振り続けるエドを、
            ロイはそっと頭を撫でる。
            「そんな事は関係ない。私は君と一緒にいられれば、それだけで
            幸せなのだよ。」
            口では、純愛を推奨しているが、実際のロイの頭の中は、ただ側に
            いるだけでは飽き足らず、エドを人間にしたら、直ぐにでも、
            あーんなことやこーんなこと、おまけに、アレコレ試したいなどと、
            放送禁止用語のてんこもりなのだが、表面上は、あくまでも、好青年。
            「私たち二人の事は、後でじっくり考えるとして、一刻も早く
            あの二人を何とかしてあげようではないか!!私はハボックを
            弟のように思っているし、君はリザ姫を姉のように慕っている。
            だから、私たちがあの二人を助けてあげなければね!!」
            どういう理屈なのか知らないが、こんな無茶な主張でも、
            エドはリザを助けるという事で一杯一杯だったらしく、ロイの言う事を、
            神妙な顔で、一々頷く。
            「でも、うまくいくかなぁ・・・・・。」
            心配そうなエドに、ロイはニッコリと微笑む。
            「大丈夫だよ。君ならうまくやれる。それに、さっき『魔法の言葉』を
            教えてあげただろう?君にしか使えない、特別な『魔法の言葉』だ。
            一緒にハボックとリザ姫の幸せの為に、頑張ろう。」
            100%自分の幸せの為なのだが、ロイは表面上は、あくまでも、
            ハボック達の幸せだと言い切る。
            「うん!頑張る!!」
            エドはまだハボックと話しているリザを、じっと見つめる。
            「リザ姉様!俺、頑張るね!!」
            ”うまくいった。これでエディは私のもの!!”
            眼をキラキラさせているエドを、こっそりと盗み見ながら、ロイは
            全て自分の思い通りに事が運んでいる事に、ほくそ笑むのだっ