「何故・・・・ここにいる。ハボック。」
愛しいエドとのデートのまっ最中、突然目の前に
現れた邪魔者に、ロイは急速に機嫌を下降させていく。
どぉおおおおおんと、黒い雲を背負ったロイは、
視線を泳がせているハボックを睨みつける。
「イヤァ〜。偶然デスネェ。王子。」
引き攣った笑みを浮かべ、棒読みな台詞を言うハボックを
庇うかのように、リザは、一歩前に出ると、ロイの肩に
乗って、キョトンとしているエドに、優しく手を差し伸べる。
「エドワードちゃん。迎えに来たの。さぁ、私達と共に
帰りましょう?」
「うん!!」
「エディ!?」
ニコニコとリザの手を取ろうとするエドに、ロイは焦る。
「エディ。約束しただろう?」
そっと耳元で囁くと、アッと声を上げて、エドは悲しそうに
差し出されたリザの手をじっと見つめる。
「あのね!リザ姉様!俺・・・・・・。」
意を決して顔を上げるエドに、リザはやさしく微笑む。
「エドワードちゃんが、私と共にいることが、最大の私の
幸せなの。もしも、あなたが私の為に、ある事をしようと
しているとしたら、それは、私が最も哀しむ事なのよ?」
「えっ!!」
リザの言葉に、エドは驚いてロイの顔を見つめる。
「ロイ?そうなの?」
俺を騙したのか?とウルルンとした瞳で見つめられて、
内心冷や汗ダラダラのロイだったが、
表面上はニッコリと微笑みながら、さり気なく
エドを手の中に閉じ込める。
「ロイ王子!!エドワードちゃんを離しなさい!!」
「いやだ!!」
フン!と顔を横に向けるロイに、その場にいた人間は
全員、どこのお子様だよ!!と内心ツッコミを入れる。
「私とエディは、まだデートの真っ最中だ!分かったら、
さっさとここから立ち去れ!!」
「門限の時間は、とっくに過ぎておりますので、迎えに
来たんです。さぁ。帰りましょう。エドワードちゃん。」
リザ姫は、ジリジリとロイに近づきながら、不敵な笑みを
浮かべると、さぁさぁと手を伸ばす。
「門限だと!?まだ昼前・・・・・。」
「午前の分の門限ですの。」
まるで悪の女王よろしく、オーホッホッホッと高笑いする
リザに、ロイの顔が引き攣る。
「プファ〜。苦しかった〜。」
「エディ!?」
指の間からピョコンと顔だけ出したエドに、ロイは焦る。
今出てこられては困るとばかりに、再びエドを閉じ込めようと
するが、それよりも前に、エドがロイの手からピョーンと
飛び出る。
「エディ!!」
「エドワードちゃん!!」
慌てて下に下りてしまったエドを再び捕らえるべく、ロイは
手を伸ばすが、リザの手の方が早かった。
「逢いたかったわ!!エドワードちゃん!!」
「リザ姉様!!」
エドに頬擦りするリザに、ロイは殺意を芽生える。
「さぁ、戻りましょうね〜。」
真っ青な顔のロイを完璧に無視したリザは、手にエドを
抱きしめながら、アルフォンスを従えて悠々と城へと
戻っていく。
「お待ち下さい!!リザ姫〜!!」
その後を、慌てて追いかけるハボック。
「許さん!!絶対に許さんぞ!!」
あっけなくエドを取られたロイは、遠ざかるリザの背中を
睨みつけながら、再びエドをこの手に取り戻す!と
決意を新にした。