七月七日、雨・・・・・・



           「雨、止まないな・・・・。」
           情事の後、京一の胸に身体を預けていた龍麻は、ポツリと呟いた。
           「そういやぁ、台風だもんな。明日まで降るらしいぜ。」
           京一は、龍麻の髪を指に絡ませながら言う。
           「そっか・・・・。じゃあ今年も逢えないんだな・・・・。」
           龍麻の呟きに、京一は龍麻の顔を覗き込む。
           「誰に逢えないって?」
           京一の瞳の中に、嫉妬の炎を見つけ、龍麻は苦笑する。
           「違う。変な勘違いすんな。俺が言っているのは、牽牛と織姫の話。」
           その言葉に、京一の瞳が和らぐ。
           「そういやあ、今日は七夕か・・・・。」
           「うん。今年こそはって、2人とも楽しみにしていただろうに・・・。」
           龍麻はベットから身を起こすと、窓の外を眺めた。
           「こんなに土砂降りじゃあ・・・・。」
           京一はそんな龍麻を優しく抱きしめる。
           「大丈夫だって。空の上は何時だって晴れているんだぜ。きっと2人は
           毎年会えているさ。」
           京一の言葉に、龍麻は弱弱しく微笑む。
           「・・・あのさ、京一・・・。」
           「なんだ?」
           龍麻はじっと京一の顔を見つめながら言った。
           「もしも・・・・。俺達も年に一回しか会えないって事になったら、お前どうする?」
           「どうもしねぇ。」
           即答する京一に、龍麻は眼を見張る。
           「だって、俺お前を手放す気なんてねぇもん。そんなことありえっこねぇじゃん。」
           「京一・・・・。」 
           京一の言葉に、龍麻の笑みが広がる。そんな龍麻を、京一はニヤリと笑うと
           そのまま押し倒す。
           「例え、七月七日しか会えなくっても、俺は雨が降ろうが槍が降ろうが、必ず
           ひーちゃんの元に行く。そして、二度と離さねぇからな。」
           首筋に顔を埋める京一の頭を抱きしめながら、龍麻はうわ言の様に呟いた。
           「絶対だよ。京一・・・・。ずっと一緒に・・・・・。」




           そして、約8ヶ月後、京一は一人中国へと旅立ってしまった・・・・。