<前回のあらすじ> 蝙蝠VS狼、もとい、マリアVS犬神の戦いへと事態は急展開!! 何故か、単位にまで話が発展していき、そりゃあ、あなた、職権乱用じゃありません こと?と誰もツッコミを入れないのは不思議ですねぇ。いえ、入れられなかったという 情報も入ってきています。おっと、ここで臨時ニュースです。なんと、我等がアイドル ひーちゃんが、猛然とマリア先生に抗議したそうです。 龍麻「京一がちゃんとヴァンパイアを演じたら、京一に無条件で英語の単位を頂戴♪」 ・・・これって、ただの取引ですね・・・。では、ここで渦中の蓬莱寺さんに、コメントを 頂きましょう。 京一「・・・俺って、ひーちゃんに愛されているなぁ・・・。あっ、でも俺の方が、その数倍 ひーちゃんのこと、愛しているぜ!」 龍麻「えーっ。俺の方がずっとずっと京一のこと愛してるよ〜。」 京一「いや、俺の方だって。」 (以下、エンドレス・・・。) げ・・現場はこんな状態です!おっとお、真神の西太后・・・もとい、生徒会長の 美里さんが、目の前を横切りました。そんなに急いで一体どこへ行こうというので しょうか?彼女には、色々と黒い噂が山とありますからねぇ。また裏工作に奔走 しているのでしょうか。気になりますが、流石に命は惜しいですからねェ。今後の 情報に期待しましょう!それでは、報道センターじゃなかった、本編に話を移しまーす! ・・・・これのどこがあらすじ? ******************************** 文化祭も残すところ、あと3日まで迫った放課後。学園祭の準備に忙しい合間を 縫って、生徒会長葵様は、某喫茶店で人を待っていた。黙って座っていれば、 自他ともに認める超美少女。それが人待ち顔の、憂いを帯びた表情で、溜息 なんかついたものだから、周りの男性客の注目を一身に集めていた。 “全く・・・。遅いわ。何やっているのかしら。” だが、菩薩様の内心は、こんなものである。あと3分待っても来なかったら、 問答無用にジハードでも贈ろうかしら、などと、物騒な事を考えていた。 「いらっしゃいませ〜!」 店員の声に、美里は入り口をチラリと見て、二ヤリと笑う。 “やっと、来たわね。” 息を切らして入ってくる人物に、今度は、店の女性客が一斉に注目する。だが、 その人物が真っ直ぐに向かう席を見ると、一様に溜息をつく。それは、男性客も 同じで、これもまた溜息を洩らす。 「すみません。」 一言、それだけ呟くと、向かいの席につく。 「うふふ。遅かったわね。壬生君。私、時間を伝え間違えたかしら?」 ニッコリ笑う美里の真意は、私、待たされるのって、慣れてないのよね。 今度やったら、即ジハードよ!!だったりする。だが、壬生は美里の怒りを軽く 受け流すと、持っていた紙袋をテーブルの上に置く。 「ご注文は?」 そこへ、ウェートレスが注文を取りに、いそいそとやってきたが、壬生は相手も 見ずに、一言呟いただけだった。 「コーヒー。」 「・・・かしこまりました。」 話せるチャンスと思っていたために、がっくり肩を落とすウェートレスの姿は哀れで ある。トボトボと下がるウェートレスに、美里は不敵な笑みで見送ると、嬉々として 紙袋を取ろうとして、手を伸ばす。だが、美里が取る前に、さっと壬生が紙袋を取る。 「壬生君!!」 睨みつけてくる美里に、壬生はポツリと呟く。 「これを渡す前に、確認したいのですが。」 「何かしら?」 ニッコリ笑う美里に、珍しく、壬生もニッコリと微笑む。周りからは、幸せそうな恋人 同士に見えるのだろうが、二人を取り巻く空気は、それを悉く裏切って、殺気に 満ち満ちていた。 「本当に、文化祭に龍麻とデート出来るのですか?」 「うふふ。ちゃんとそういう時間を作ってあげるわ。」 “まっ、本当にデート出来るかは、保証しないけど・・・。” 「それなら・・・・。」 紙袋を美里に渡す壬生。急いで袋の中身を確認して、二ヤリと美里は笑った。 「本当は、ここで確認したいところだけど、場所がねぇ・・・・。」 美里はチラリと周囲を見回した。すると、慌てて視線を逸らす人間が数人。 美里は溜息をつく。 「後で確認させて頂くわ。そうねぇ・・・。壬生君の腕を信用しているけど、万が一って 事もあるから、当日、早めに来てくれないかしら。」 「あぁ。構わないさ。」 「お待たせしました。」 そこへ、壬生が注文した、コーヒーが運ばれてきた。 「じゃあ、私はこれで・・・。」 美里は、紙袋を持つと、そそくさと店から出て行った。 「ハッ、あの女・・・。」 その時、壬生はある事に気がつき、慌てて視線を店の入り口に向けた。 だが、美里の姿は既にそこにはなく、深い溜息をついた。 「ここの勘定を全て、僕に押し付けたな・・・・。」 壬生は、テーブルの隅にある、美里のオーダー表を、憎憎しげに摘み上げた。 「ねぇ。京一。」 その頃の真神学園3−Cの教室。醍醐達数人に、おやつの買い出しに行かせて、 教室では二人だけである事をいい事に、じゃれ合っていた。龍麻は京一の腕に 持たれながら、ずっと疑問に思っていた事を口にする。 「美里さん、今回の文化祭って、俺達二人が主役だって言ってたよね・・・。」 「そうだっけ・・・?」 京一も記憶を辿ってみる。そう言えば、文化祭の事を決める最初のHRの時に、 そんな事を言っていたような気がする。 「・・・どこが主役なの・・・?」 「・・・・さぁ・・・?」 一応、お化け屋敷のメインのヴァンパイア役をやる京一は、主役と言っても可笑しくは ないが、何故自分までもが?と疑問に思っていたのだ。 「俺って、実行委員って言っても、そう大した事やらないし、お化け屋敷でも受付け だろ?全部裏方の仕事なのに・・・。」 首を傾げる龍麻に、京一はいきなりきつく抱き締めた。 「きょ・・京一!!」 「大丈夫だ。ひーちゃん!何があっても、必ず美里の魔の手から、守ってみせる!」 真っ赤になる龍麻の耳元で、そっと京一は囁く。 「・・・京一、絶対だよ・・・。」 「あぁ。任せろ!」 その言葉に、龍麻はニッコリと微笑むと、そっと目を閉じた。次の瞬間、唇に京一の 熱を感じ、龍麻は嬉しさのあまり、京一の首に腕を回した。 |