<前回のあらすじ> 今日も今日とて、京一と龍麻はラブラブ。もう、世界は二人だけの為にあるの〜。と BGMが流れてきそうな、二人のラブラブぶりに、耐えきれなくなった、醍醐以下3−C 有志諸君は、二人を残して、食料買い出しの名目の元、そそくさと逃げ出してしまう。 そんなんで、本当に文化祭に間に合うんでしょうか。間に合わなかったら、全員 (龍麻を除く)、菩薩様の“ジハード”が待っているぞ!!さて、その菩薩様ですが、 何でも新宿の某喫茶店で彼氏と待ち合わせ? 壬生「・・・死にたければかかってきなよ・・・。」 いえ、訂正します。どうやら、壬生を巻き込んで、悪事を着々と進行させているようです! 菩薩眼「うふふふ。何かしら?悪事って。」 いえ、訂正させていただきます。壬生の協力の元、着々と文化祭の準備を整えている ようです。さて、次なる犠牲者、もとい、協力者は!! ******************************** 「うふふ。どうやら、文化祭に間に合ったわね。」 菩薩様は、3−Cの「お化け屋敷」の前に佇むと、満足そうに頷いた。 その足元には、ここ数日の徹夜続きで、屍と化した、3−Cの大道具係が倒れている。 「美里、いくら最後でも、こりゃあ、少しやり過ぎじゃねぇか?」 京一が、不満そうに言う。 「あら?何故かしら?やはり、やるからには完璧に・・・。」 「だからって、A組とB組の教室まで使うか?普通。」 3つ分の教室プラス廊下を作り変える、こっちの身にもなってほしい。だが、そんな 京一の抗議を美里は、うふふふと一笑した。 「だって、A組もB組も文化祭に参加しないのよ。丁度ここは角だし、使わないって 手はないわ。」 「でもさ、良くこんなにアンティークの物を集められたね。」 色々と丁度を見て回っていた龍麻が、二人に気づき、声をかけてきた。 「うふふ。いるでしょ。仲間に専門家が。」 その言葉に、龍麻はポンと手を打つ。 「そうか!如月か!」 「ええ。如月君、快くレンタルしていいって言ってくれたのよ。」 「でも、レンタル料って、高いんじゃ・・・。」 心配げな龍麻に、美里はにっこりと微笑む。 「うふふふ。お金は取られなかったわ。」 “そう、お金は要求されなかったけどね・・・。” 美里はその時の事を思い出してニヤリと笑った。 「本当に、龍麻と文化祭でデートできるんだな!!」 暗殺者同様、若旦那も龍麻という餌で食らいついてきたのだ。 「ええ。タダでレンタルしてくれたら、そういう時間を作ってあげてもいいわ。」 “本当にデート出来るかは、神のみぞ知るだけど・・・。” 散々渋っていた如月も、龍麻とのデートという餌には弱かった。何度も何度も念を 押して、漸く無料レンタルをOKしたのである。 「えっ!あの如月が?美里さんって、すごい・・・。」 感心したように、龍麻は美里を見つめた。仲間の如月は、こと商売に間しては、 きっちりとしていて、仲間だからと言って、決してまけないのが、仲間内では定説に なっていた。だが、真実はそうではない。如月は、商売にも私情挟みまくりの人間だった。 龍麻の装備には、必ず0を2〜3個少なくして、その分、恋のライバルと定めた者には、 容赦なく0を3〜4個多くしている。特に龍麻の恋人京一にはひどく、0を6個くらい多く つけるのは当たり前!その上、紛い物を高額で売りつけているのだから、始末におえない。 そんな事とは露知らず、龍麻は美里の手腕に、ただただ感心していた。 「・・・・信じられねェな・・・。」 その時、京一は不機嫌そうに呟いた。 「京一?」 何故京一が不機嫌になったのかわからない龍麻は、振り向くと首を傾げた。だが、京一は そんな龍麻を背中で庇う様に美里の前に立つと、持っていた愛用の木刀を、美里につきつけた。 「・・・・金は要求されなかった。じゃあ、一体何を要求されたんだ?」 返答次第では、どうなるかわからねェぜ。と、京一は不敵な笑みを浮かべる。だが、その 一万倍も菩薩様の器は大きかった。ニッコリと微笑むと、木刀の先を掴んだ。 「うふふ。京一君。少しは仲間を信じたら?」 ミシミシと美里が掴んでいるところが、音を立てる。 「へッ。仲間ねぇ・・・。仲間でも譲れねぇモンがあんだよっ!!」 二人の間に、火花が散る。その険悪な雰囲気を壊したのは、意外にも龍麻だった。 「そうだよ!京一!俺達仲間じゃないかっ!」 「ひ・・ひーちゃん・・・。」 驚いて、京一は後ろを振り向くと、眼に涙を溜めた龍麻が二人を睨んでいた。 「仲間を信じない京一なんて、嫌いだ!!」 怒って癇癪を起こす龍麻を宥めたのは、意外にも美里だった。 「うふふふ。大丈夫よ。京一君だって、判ってくれるわ。なんせ、仲間なんですもの。ねぇ? 京一君?」 ニッコリと微笑む美里に、京一は一瞬返答に窮した。 「京一君。聞こえなかったの?」 「京一?」 美里と龍麻の両方から責められ、京一は決まり悪そうに謝った。 「わ・・・悪かったよ・・・。疑って・・・。」 「京一・・・。」 謝る京一に、龍麻は機嫌を直して、にっこりと微笑む。 「そうそう、京一君。今夜ここに一人で泊まって、アンティークが盗まれないように、番をして 頂戴。なんせ、借り物ですもの。」 「ええええ!俺が〜?一人で〜?」 途端、嫌そうな京一に、美里は軽く睨む。 「当然でしょう?仮にも仲間を疑ったんだから、それくらいしてもいいんじゃない?大丈夫よ。 そんなに深刻に考えなくっても。」 美里は、廊下に取りつけた簡易ドアを叩いた。 「入り口はここだけだし、第一3階のここに窓から侵入する馬鹿はいないわよ。」 美里にそう言われて、京一は救いの眼を龍麻に向ける。途端、龍麻は済まなそうな顔をした。 「うふふふ。緋勇君に頼っても駄目よ。実行委員は何かと忙しいんですもの。じゃあ、そろそろ 行きましょう!」 そう言うと、美里は龍麻を引き摺って、その場を後にする。 「ひ〜ちゃ〜ん〜!カムバーック!!」 京一の叫び声が、3階中を駆け巡った。 「ちっくしょう!絶対にわざとだ!!」 京一は、ヴァンパイアの小道具の一つ、棺桶を蹴っ飛ばしながら、悪態をつく。 「折角、文化祭の前夜祭と称して、今夜はずっとひーちゃんと・・・・・。」 「俺となんだって?」 突然、背後からかけられた声に、驚いて京一は後ろを振り返った。そこには、コンピニの袋を 下げた龍麻が、ニコニコと微笑みながら立っていた。 「京一、夕飯まだだろ?一緒に食べようと思って、買ってきたんだ♪」 「ひーちゃん。実行委員の仕事は、もういいのか!」 嬉々として尋ねる京一に、龍麻はぺロリと舌を出した。 「へへっ。まだ。でも、京一と一緒に食べたくって、抜け出してきちゃった。・・・・駄目?」 上目遣いで京一を見つめる龍麻に、京一は異を唱えることはなく、むしろ喜び勇んで、 龍麻を抱き締める。 「スッゲー、嬉しいぜ!」 京一は、龍麻の顎を持ち上げると、その唇を思う存分味わった。 「ン・・きょう・・・京一・・・。」 だんだんと激しくなる口付けに、さすがにここではヤバイと、無け無しの理性で、 龍麻は京一の背中を叩く。 「・・・いいじゃん。二人だけだぜ・・・。」 耳元で囁かれる京一の声に、龍麻は真っ赤になりながらも、必死に抵抗を試みる。 「駄目・・だって・・。ここ・・・学校・・・。」 今だ息が整わない龍麻は、途切れ途切れに文句を言うが、それさえも、京一には 誘っているようにしか聞こえない。 「へへっ。愛しているぜ!ひーちゃん。」 さらにきつく抱き締めようとする京一から、龍麻はスルリと身をかわす。 「ひーちゃん!」 不服そうな京一に、ちょっと罪悪感を感じながら、龍麻は笑いながら教室中を逃げまわる。 「待てよ。ひーちゃん。」 そんな龍麻を、京一も笑いながら追いかける。 「捕まえた!」 棺桶に躓き転びそうになった龍麻を、京一は背後から抱き締める。 「・・・ねぇ。京一。」 「ん?」 背後から、龍麻の首筋を愛撫している京一の頭を、龍麻はそっと触れた。 「このお化け屋敷のセットって、この前行った、ディズニーランドのホーンテッドマンションに 似ているね・・・・。」 「ああ。それをモデルに作ったって、言ってたっけ・・・。それがどうしたんだ?」 「あの時、二人だけでゆっくりできなかっただろ?だからさ・・・明日は・・・・。」 龍麻の言わんとすることを察して、京一は龍麻の身体を抱き締めた。 「大丈夫だって。休み時間を同じにしたし、二人だけで色々と見て回ろうな!」 「うん。」 嬉しそうに笑う龍麻に、もう1度口付けしようとしたが、次の瞬間、タイミングを見計らったか のように、絶妙のタイミングで邪魔が入る。 ピンポンパンポーン・・・・。 「実行委員の緋勇龍麻君。実行委員の緋勇龍麻君。至急、生徒会室までお戻り下さい。 繰り返します・・・・。」 放送を聞いた龍麻は、がっかりとした表情で、京一の頬に軽くキスをする。 「ごめん・・・。サボっているのがバレちゃったみたい。俺、もう行くね・・・。」 「ひーちゃん!!」 手をヒラヒラと振りながら、龍麻は名残惜しげに、教室を後にする。 「ちっくしょー!!美里!覚えていろ!!」 いいところを、美里に思いっきり邪魔された京一は、明日こそは絶対に邪魔させないと、 決意を新たにする。だが、京一は気がつかない。敵は美里だけではないことに。その事を 嫌とするほど、思い知らされるのは、数時間後に迫っていた・・・・。 |