それは、まだ全ての女の子が、お姫様だった頃のお話です。
全ての女の子は幸せでした。
それは、“薔薇の王子様”が守ってくれていたから・・・。
ある所に、“薔薇の花嫁”と呼ばれる女の子がいました。
表向きは、薔薇の王子様の“妹”となっていましたが、実は
世界を革命する力を持つとされる、一振りの聖剣が、女の子の
姿に変化していたのでした。薔薇の王子様は、その剣をとても
愛していました。勿論、剣も王子様を愛していました。2人は
常に一緒で、離れ離れになることなど、考えもできませんでした。
ところが、悲劇は2人に降りかかりました。度重なる戦いで、聖剣は
血に穢れ、魔剣となってしまったのです。それでも、愛する薔薇の
王子様のために、聖剣はあらん限りの力を振り絞り、薔薇の王子様に
勝利を与え続けました。しかし、それがより一層、聖剣を魔剣へと
誘うこととなるのでした。
薔薇の王子様は、なんとか剣を元の聖剣に戻そうとしました。しかし、
どうしたらよいか、わかりません。途方に暮れていると、1人の老婆が
王子様の前に現れました。老婆は、世界の果てにある森の奥深く、
“薔薇の柩”と呼ばれる場所に、剣を封印すれば、剣は再び力を
取り戻し、王子様の前に現れるであろうと伝えた。悩んだ末、
王子様は、聖剣を封印することに決めました。
長く苦しい旅を経て、ようやく王子様は“薔薇の柩”に辿り着くことが
出来ました。剣を封印した王子様の前に、いつかの老婆が現れ
ました。老婆は見る見るうちに若返り、“薔薇の花嫁”の姿になり
ました。驚く王子様に、老婆、いえ、薔薇の花嫁はこう言いました。
「私の愛する王子様。私は疲れ果ててしまいました。あなたは全ての
女の子を守る“薔薇の王子様”。でも、私はあなたの“妹”。ただの
剣ですわ。あなたを一番愛しても、あなたを独占出来ない。あなたの
お姫様には、なれないの。」
薔薇の花嫁は、そこで一旦言葉を切ると、にっこりと微笑みました。
「でもね、たった1つだけ、あなたを独占する方法がありましたの。
それは、何だと思いますか?」
薔薇の花嫁の質問に、薔薇の王子様は、何も答える事が出来ません
でした。それは、優しく微笑んでいる薔薇の花嫁に、薔薇の王子様は
恐怖を感じたからでした。
「簡単な事だったのですわ。“王子様”でなくなれば良いのだから・・・・。」
オーホホホホホと笑いながら、薔薇の花嫁は、再び老婆 ―“魔女”―の
姿に変化すると、何処かに姿を消してしまいました。それと同時に、
世界は闇に覆われてしまいました。
もっと早く気付くべきでした。“聖剣”が“魔剣”になったということは、
“薔薇の花嫁”も“魔女”となったということに・・・・・・。
“薔薇の柩”に眠るのは、“薔薇の花嫁”と“薔薇の王子様”。
2人の眠り守るのは、抜け殻の男がただ1人。
千年の孤独の眠りについた世界。
再び、光を取り戻すには、“薔薇の柩”を開くがよい。
そして、真実の愛が世界を照らし、
世界は千年王国(ミレ二アム)となるだろう・